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はじめに
コロナウイルスの影響によりお家で過ごす時間が増えた昨今。
家で本を読む際も、場所を取るからと最近は電子書籍で済ます方も多いのではないでしょうか?
そんな方にこそ是非知っていただきたいのが、アーティストが自らの作品をまとめた「アートブック」の世界。思わず触ってみたくなる、装丁や紙の材質。読む方向、読み手の自由な見方によって想像が膨らむ世界観はリアルな本だからこそ伝わる面白さが詰まっています。
どうしても自分の本棚に置きたくなる、そんな素敵な一冊と出会うために、今回はこの機会にぜひ読んでおきたいアートブック10冊をご紹介致します!
静物写真と言えばコレ!Irving Penn(アーヴィング・ペン) / Still Life
まず最初にご紹介するのは、言わずと知れたファッション写真の大家、アーヴィング・ペンのStill Life。かの有名なファッション誌“Vogue”のカメラマンとしても名高い彼の静物写真を収めた代表作です。
アイテムの選び方、ライティング、フレーミング、そして誰が見ても美しいと感じる絶妙なバランスで配置された対象は、まるで今にも動き出しそうな臨場感が感じられます。
時代を感じさせない写真の鮮明さに何度見ても驚かされます。
静物写真の撮影をこれから始めたい!という方にはぜひおススメしたい一冊で、私も一生ものの教科書だと思って大切にしています。
Irving Pennといえば「Flower」という花の写真集か、この「Still Life」が真っ先に思い浮かぶ人も多いでしょう。どちらか一冊は必ず手元に置いておいて損はないはずです。
60年代映画のような世界観、Alex Prager(アレックス・プレガー) / Silver Lake Drive
写真の色味やセットの作り込みを見ると、60年代に作られたのレトロな作品のように感じるかもしれませんが、撮影したのは米国の現代写真家、Alex Prager(アレックス・プレガー)。
フォトグラファーであり、映画監督でもある彼女ならではの、大規模なセット、数百人のエキストラ、大規模な数の制作スタッフを動員した、かなり見ごたえのある一冊です。
ただのレトロ写真ではなく、ハリウッドや実験的な映画、ポピュラー文化、ストリートフォトなど幅広い分野から影響を受けた、非日常感・良い違和感が溶け込んでいます。
登場人物一人一人が主人公のようでストーリーを感じる程の作り込みは、一枚の画としての迫力が強く、存在感があるので、私も自室のテーブルに常に飾っています。
彼女の短編映画の作品はNOWNESSのYoutubeチャンネルでもご覧いただけます。
セリフは一切無く、映画というよりかは一つのコンテンポラリーアートの作品のような映像です。
眠る犬のポートレート? Erik van der Weijde(エリック・ヴァン・デル・ヴァイデ) / NINA
「TOKYO ART BOOK FAIR」という、一年に一度東京で開催されるアートブックの大規模な祭典があるのですが、私が昨年そのイベントに行った際に出会った、“世界中の誰かのアートブックがランダムで出てくる本の自動販売機”でコインを入れて出てきたのがこちらの本なんです。
数ある本の中から私の元に届いたという運命的な部分に惹かれ、読む前から既に愛着を感じていたのですが、ドキドキしながら中を開くと、そこにはあられもない姿で爆睡するワンコの写真がたくさん・・益々好きになりました。モデルは作者であるオランダの写真家エリック・ヴァン・デル・ヴァイデの愛犬、NINA。人間のポートレート写真集はよく見かけますが、犬、しかも自分のペットの何気ない日常を一冊のZINEにまとめているのは私には初めての出会いで、遠い国の誰かの家をずっと覗いている感覚が新鮮で面白かったです。
読み終わる頃にはあなたもきっとNINAのことが大好きになっているはず。
アイデアを「練る」+写真を「掘る」Nerhol(ネルホル) / Phrase of Everything
ネルホルの名前や作品は何となく知りながらもその正体を知らず、ここ最近までずっと海外のアーティストだと思っていた私ですが、実は国内のお方で、しかも2人組のユニット、さらに「アイデアを”練る”田中義久と、それを”掘る”飯田竜太で結成されたことから名前を取ってNerhol(ネルホル)」というコンセプチュアルな部分を知ってから、すごく興味を惹かれてのめり込んでいきました。
ポートレートの撮影をする時、人は静止しているようで僅かに動いています。身体を支える筋肉が血流によって硬直・流動し重心が変化するためです。その「静止出来ない」こと=「時間の変成」と捉えて、3分間連続撮影した肖像画像を200枚程重ね、彫刻を施すことで”時間や存在のゆらぎ”を表現しています。パソコンの編集や機械ではなく、1枚1枚カッターを使い手で掘っているので、正面から見ると平面作品に見えますが、実物を横から見ると、幾重にも重なったレイヤーがまるで山脈のように見えるのだそう・・・本当に面白いですよね。
飯田さんは彫り師として、田中さんはグラフィックデザイナーとしてそれぞれ異なる分野で活動していたお二人が、2007年にネルホルを結成。お二人の活動を見ているだけでクリエイティブなマインドが刺激されますね。
言葉は「あるく」と「はしる」のみ。幻想的な世界を描いた絵本阿部海太 / みち
本屋さんで出会った時、思わず表紙買いしてしまった美しい色彩のイラストレーション。阿部海太さんの「みち」という絵本です。
どこまでも続く道をゆく、少年と少女。鮮烈で深い色彩。「あるく」と「はしる」の2語のみに厳選された言葉。絵本としてはすごくシンプルな構成なのですが、だからこそ、2人がどうして、何のために、どこへ向かうのか、読み手の想像を掻き立てながら様々な解釈でページを進めることが出来る本なのかな、と私は感じました。
読み終わった後、1本の映画を見ていたような感覚になる絵本はこれが初めてです。お子様だけでなく、大人の方でも楽しめる、シンプルながら読み応えのある一冊かと思います。
何と言っても色彩がとにかく美しい作家さんなので、気になった方は是非、他の作品も見ていただきたいです。
女性らしさと、ちょっぴり毒っ気がクセになる? / I Way Here Helsinki
私がまだ大学3年生の時、デザインの研修で訪れたフィンランドのヘルシンキという街。今の会社で働くルーツにもなっているような場所ですが、そんな街の中のNIDEという小さな本屋さんで出会ったイラストレーションブックです。「I Way Here Helsinki」というタイトルが目に入り、自分がここに来た旅の記念として残る物が欲しくて購入。フィンランドの街並みや人々、ファッション、文化、食べ物など、色は黒とピンクとゴールドのみを使って描かれています。いわゆる観光ガイドの様なものではなく、あくまでイラストを目で見て楽しむための本。感覚として、文章よりも視覚的な情報がストレートに入ってくる絵の方が、見返す度に、こんな場所に行って、こんな景色を見たなぁと当時の気持ちの部分まで記憶が戻りやすい気がしています。
女性の“好き”がたくさん詰まったキュートなモチーフ多いですが、どこか毒のあるような要素も隠れているように感じます。当時の私と同じく、学生さんなど若い世代の方は好きな世界観だと思うのでオススメです。
都心に現れた〇〇〇の大群!不思議な違和感水谷吉法/ TOKYO PARROTS
東京で異常繁殖したライムグリーンのインコの大群に心奪われた作家、水谷吉法さんの作品。
その気持ちのままに、都会に出現した不思議な光景への違和感を写真に焼き付けています。
本来は熱帯地方で生息するライムグリーンのインコの群れ。1970年以降にペットとして日本に輸入され、野生化して異常繁殖しました。住宅街を飛び回り、電線の上で羽を休める姿は、都会に突如として現れた非日常。その不思議な光景に心奪われ、直感的にカメラを向け、コンクリートや電線など都市の断片をフレームに入れながら、強いストロボでインコや植物、空をカラフルに映し出しています。都市が抱える環境問題にも言及すると同時に、異質な存在の侵入がもたらす違和感を独自の視点で捉えた、魅力的で非日常な都市の風景写真とも言えるでしょう。
「死んでしまう」ということ川内倫子 / うたたね
ありふれた日常がモチーフですが、女性らしい繊細な視点と卓越した審美眼で切り取られた写真は一つ一つに力強いメッセージ性を感じます。人がいずれ避けられない「死んでしまうということ」をテーマにした重く、暖かく、悲しく、とても美しい作品です。
私の勝手な解釈ですが、ページによっては右のページと左のページが対になっていて2つで1つの作品のような魅せ方をされているのが印象的でした。
死というテーマと同時に「生きることの残酷性」のようなものを突きつけられた衝撃を感じます。きっとこの一冊を見る前と見た後で日常風景の見え方が変わって、普段の何気ない生活もかけがえのない時間のように感じられるかと思います。
私の拙い言葉で表すには難しい良さが詰まっていますので、百聞は一見に如かず、まずはお手に取って読んでみてください。
“ニナガワワールド”全開!蜷川実花 / earthly flowers, heavenly colors
蜷川実花さんといえば、鮮やかな花の作品を思い浮かべる方も多いのではないかと思います。
独自の色彩感覚と、凛としたエネルギーに溢れる花々はまさに“ニナガワワールド”。
リアルなのかフェイクなのか分からなくなってしまうほどに鮮やかで整えられた花は、全て自然の色彩です。
こちらの本、中身はもちろんのこと、表紙と装丁がとっても面白いんです!表紙は角度によって2種類の絵柄に切り替わるレンチキュラーを使用。(ホログラムのようなイメージです)装丁は背表紙なしの糸綴じで「MIKA NINAGAWA」の文字が側面のテクスチャーの上に浮かび上がります。写真でしか伝えられないのが本当に残念ですが、ぜひ実物を手に取って色んな角度から見ていただきたいです!
自分の境界について考えるきっかけに。佐藤壮生、宮林妃奈子/ Border Book-境界の旅–
アーティストの青島左門さん作品「国境を越える鳥」をきっかけに始まったBorder Projectの一環として、宮林妃奈子さんの絵と佐藤壮生さんの文章で、命の境界について考察したビジュアルブックです。ドロフィーズキャンパス内「蔵で旅するBook Store」でも販売しております。
本を読んだ後は是非、蔵で旅するBook Storeの前にある青島さんの作品「国境を越える鳥」もご体感下さい。鑑賞者自らが参加できるインスタレーション作品で、庭園空間にそれぞれ150万個を超える青い石と大地の石が二つの領域に分けられ、長い年月をかけて境界が変化していくプロセスを含めて、未来を変えていく場として公開されています。この「国境を越える鳥」を深く味わい、読者が自らの境界について考えるきっかけになることを願ってこちらの本が作成されました。
まとめ
アートブックの世界、いかがでしたでしょうか?
今回ご紹介した以外にもまだまだたくさんの素敵なアートブックがございます。
なかなか遠出が出来ない昨今。本を開けばいつでも、そこが美術館になります。
本を「読む」のではなく「観る」のも新たな楽しみ方の一つです。
この機会に是非、お気に入りの一冊を探してみてくださいね。
田淵遥香 / 「白のMINKA」スタッフ
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