家づくりの叡智- 家のデザイン・間取り

GOOD DESIGN建築家が考える
女性に優しい動線計画の7つの秘訣

WRITER

坂本政彦 / 建築家・一級建築士
株式会社ピー・アイ・イー 代表取締役

GOOD DESIGN建築家が考える<br>女性に優しい動線計画の7つの秘訣

はじめに

誰しも家づくり・間取り検討をする際に、動線計画をどうしたら良いのかと迷うところ。ここでは、その中でも、「女性に優しい」という視点から動線計画の秘訣をご紹介させていただきます。

 

女性に優しい7つの動線計画

1.女性に優しい玄関廻りの動線

荷物を持って帰宅した際に、収納場所が近くにあるのは、力の弱い女性に優しい家となります。宅急便で送られてきた荷物を玄関脇のシューズクローゼットにすぐ置けるのは便利ですし、キッチンや食品ストック収納であるパントリーへのアクセス性が良いことも助かります。

ただし、玄関の近くにパントリーをマストの要件としてしまうと、必然的にキッチンの位置を限定してしまうことになりますので注意が必要です。敷地条件などによっては、キッチンを玄関から離した方がよいというケースも多いです。

また、駐車場からの動線も配慮出来ると嬉しいところ。屋根や庇を設けて、雨の日でも濡れずに出入り出来たら嬉しいですね。勝手口の想定と共に検討したい要素となります。

 

2.女性に優しい調理動線

キッチン廻りの動線は、女性にとって、最注目の動線!

調理道具や食材ストックの位置・調理電化製品のレイアウトなど配慮が必要となります。レイアウトは好みが分かれるところですが、実際の間取り動線計画となると、リビングダイニングを見渡したい、キッチン内側を見られたくないということにフォーカスしがちな傾向にあります。

優しい動線の実現としては、配膳のし易さ・他の家族の参加のし易さにフォーカスすることをおススメします。例えば、子供のお手伝いを即すセンターテーブルを設けたキッチン動線なども良いでしょう。

 

3.女性に優しい洗濯動線

家事の中で、調理と並び、最も負担が大きいのが洗濯!

洗濯物が出る(着替える)→洗濯する →干す →たたむ →収納 という流れが洗濯動線となります。

最も負担となる家事でありながら、この動線をあまり意識せずに間取りが計画されてしまうことが多いと感じます。洗濯する場(洗濯機置き場)は、キッチンと同一階で水廻りが同じ位置にあるのが良いとされ、各寝室にクローゼット収納があるのがあたり前とされたりします。

洗濯機にかけられ濡れて重い洗濯物を干す場までの動線をどうするか? 乾いた洗濯物を取り込み、どこでたたむか? その後の収納はどうするか? 動線をコンパクト化するのとともに、手伝いを即す・働いている姿を見てもらうという視点を持つことにより、お互いが気持ちよく家事日常を過ごすことが可能です。

 

4.女性に優しい掃除動線

単なる掃除のための動線となると、掃除道具収納の場所を各階で使い易くという程度にしかいうことが出来ません。掃除をする場・掃除の頻度の高い場を意識することが重要です。掃除をする動線よりも、掃除をする必要が生まれる動線・汚れる動線・

家族が帰宅してから着替えるまでの動線・洗面浴室まで至る動線・着替えるために衣類を移動させる動線を意識することは、掃除がより必要な場を限定し意識することとなります。家中が汚れるころを出来るだけ避け、最低限のエリアが汚れるとなれば掃除も楽ですね。言い方がわるいかもしれませんが、汚染エリアのヒエラルキー的なものを意識すると、掃除の頻度を少なくすることが可能です。

 

5.女性に優しい身支度動線

身支度がストレスなく快適に出来ることは、女性に優しい動線として重要です。

朝起きて、洗面し、着替え、化粧する という流れ。西欧の間取りでは、寝室の近くに、専用の浴室洗面室・クローゼットがある間取りが多く便利です。ただし、この身支度動線は、前述の洗濯動線と相反する面も出てくる場合があるので、優先順位をつけて検討することが大切です。

 

6.自分の居場所への動線

自分の居場所となる書斎・趣味室・ミセスコーナー。一般には、キッチンの近くに設け、いつでもアクセスし易くし、ちょっとした時間でも利用することが出来、家族の様子を伺うという面でも便利とされたりします。しかし、気分を変えるという面では、少し距離を置くのもよいと言えます。近いばかりが良い動線とは言えません。また洗濯動線の経路上に設ける考えも良いアイデアです。

 

7.子供の動線

親の目線から見る子供の動線というと、リビング階段がよく言及されます。帰宅後に、子供の様子が分かるように、リビングを通ってから子供室へ至るという動線です。

勿論、上記もおススメですが、更に進んで、子供室の機能を限定することを、よりおススメします。登校用具は帰宅後すぐに置ける場があれば、見える場で登校の支度が可能ですし、散乱する範囲も狭まります。

学習する場もリビングの近くにあれば、様子を伺うことも用意です。無理に子供室へ行かせる動線を想定するのではなく、子供室へは最低減のアクセスに留める動線を検討することで、より密接な親子関係が容易となり、快適な暮らしが可能となります。

 

まとめ

家づくりにおける動線計画というと、便利に・家事楽・省力化などに注力しがちとなります。しかし、それらが全てでは無く、快適性・寛ぎ感など多くのバランスの元に家づくりはされるべきと考えます。

勿論、効率も大事です。しかし、せっかくの家づくり、効率だけでなく、より快適で豊かな暮らしが目的のはず。心優しく穏やかに丁寧な暮らしが実現出来る動線が、本当の意味での「女性に優しい動線計画」と言えるかと思います。

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坂本政彦 / 建築家・一級建築士
株式会社ピー・アイ・イー 代表取締役

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