家づくりの叡智- 家のデザイン・間取り

浜松で「吹き抜け」のある家を建てるメリット・デメリットは

浜松で「吹き抜け」のある家を建てるメリット・デメリットは

新築やリフォームを計画する際に、開放的で伸びやかに暮らす工夫として「吹き抜け」を検討する方が増えており、皆様から多くのご質問をいただきます。「吹き抜け」を採用することは憧れとともに不安もあるかと思います。間取りを検討する際の空間構成に大きく影響する「吹き抜け」をつくるかどうかの判断基準として、下記の内容を読んでいただきたく思います。

 

なぜ吹き抜けを希望する人が増えているのか?

コロナ禍によってステイホームを経験し、開放感ある住まいづくりや、快適で気持ちよく家で過ごす時間に対するニーズが急速に高まっています。また家に居ながらも立体的につながる吹き抜けを介しての心のつながりや距離感が望まれるのは、家族同士であっても遠すぎず近すぎない「個」としての独立性を確保できるから。ここから先では、具体的な吹き抜けのメリットをお伝えしながら同時にデメリットも知っておくことで、後悔しない間取りづくりのヒントにしていただきたいと思います。

都田建設の「吹き抜け」施工実例はこちら

 

吹き抜けをつくるメリット

 

①なんといっても開放感!

住宅の各階の天井高は2,400mm~2,600mmが一般的です。なので間取りが決まった建売住宅を選択する方は、規格に沿って作られた天井高を受け入れるしかありません。しかし自由設計の注文住宅で家づくりを検討される方ならば、画一的な天井高を受け入れる必要は全くありません

吹き抜けの天井高は一般的な天井高の2倍以上(5,000mm~)となります。その空間に身を置くと人間の五感が受ける感覚は大きく変わるのです。天井高を変えることで、開放感・こもり感・抜け感・囲われ感など、その部屋に居る時だけでなく、暮らしの中で部屋を移動する際に気持ちの変化を誘う効果があります。巧みに工夫すれば日常の中に積極的な気持ちを掻き立ててくれます。

例えば、家族が集まるリビングを吹き抜けによって空間容量を広げることで、圧迫感を無くして、家族同士であっても長時間接近している際に覚える居心地の違和感を解消することができます。特に思春期のお子様にとっては、親との心理的な距離感の確保が心の安定につながると言われます。何年経っても家族が自然に集まる場所をつくるシカケとして「吹き抜け」は有効です。

 

②家族とのつながりのシカケ

1階と2階が視覚的につながる空間となる吹き抜けは、家の中の「公と個の場所の接続空間」として大きな効果を発揮します。家で独りの時間を大切にできるからこそ、リビングやダイニングなどの家族が集う空間でも寛ぐことができるのです。だからといって独りの時間が家族の気配まで断絶するようでは、心のつながりを育むことは難しくなります。吹き抜けを通じて、家族と目線は合わずとも生活音や声などが聞こえることで双方が繫がっている安心感が得られるのです。

また空間のつながりによって、キッチンから立ち上る料理の匂いなどから嗅覚で家族の気配を感じ合うこともできます。顔を合わせないと会話が成り立たないのではなく、言葉を交わさずとも互いの存在を感じ合える住まいは家族の絆を育む大きなシカケとなるのです。

 

③サードプレイス(第3の空間)との関係性

リビング・ダイニング・キッチン・そして個室などで構成した「〇LDK」と呼ばれる間取りの表現方法が一般的となっていますが、実はこのような呼び方は1960年以降の高度成長期に欧米から入ってきたプレハブ規格住宅で使われた呼び方です。そのような画一的な間取りが世の中に溢れることが、果たして日本人の心の豊かさにつながったのかは賛否両論です。そして現在、従来の呼び方では表現できない空間を住まいの中にプラスαとして確保することが、より心の充実を得られる間取りであると静岡大学教育学部・外山知憲名誉教授の研究結果でも明らかになっています。

その空間とは「サードプレイス(第3の空間)」。廊下やコーナーに家族それぞれの小さな居場所を確保することです。個室に篭もらなくても家族の動線の中にちょっとした「個の場所」があることで、個を保ちながらも自然に家族との会話が生まれたり、互いを意識し合ったり、気配を感じやすくなるのです。そのサードプレイスを吹き抜け近くにつくることで、②でお伝えしたように家族の絆がより高まるのです。

 

④空気の循環

住宅の空気環境は心と身体にとても大切であり、設計段階で換気計画を検討することは必須項目と考えていただきたいと考えています。地球温暖化で環境問題が待ったなしの中、住宅性能に対する基準も高くなっています。そして消費電力を抑えるエコ住宅であるためには気密性能が大切です。室内と外部の空気の入れ替えだけでなく室内の空気を強制的に循環させる住宅もありますが、それによって更に電力を消費するのは身体にも環境にも家計にも優しくはありませんね。

だからこそ空気を循環させながら室温を一定に保ちやすい空間づくりには、断熱性や気密性を高めて外部と遮断した、室内空間全体を快適に保つ「吹き抜け」という垂直方向の開口部が大きな効果を発揮するのです。近年は薪ストーブ・ペレットストーブ・ガスヒーターといった家全体を一つの暖房器具で温度差なく快適に!というニーズが高まっており、空気の流れをつくる上でも吹き抜けはとても相性が良いのです。

また、この浜松エリアは晴天率も高く、夏は南西からの風が毎日といっていいほど吹く地域特性から窓を開け放して生活する人が多いので、低い場所から高い場所への風の通り道となる吹き抜けをつくることは、心地よく暮らすためにとてもメリットがあるのです。

 

⑤光を室内に取り入れる

高い天井近くにある窓から降り注ぐ光は室内を明るくそして気持ちを快活にしてくれます。そして高窓から取り入れる光は優しく壁面を照らすので、間接照明のような柔らかい明るさを取り入れることができます。

狭小敷地のように隣の建物と接近していたり南側にお庭が作りづらい建築地の場合などは、吹き抜けを介して一階まで光を取り込めるよう窓の大きさと高さを設計することで、日当たりの問題を解決することができます。また寒い冬には斜めから差し込む直射日光によって室内を暖かくする効果もあります。また、室内に居ながら周辺環境に左右されず空を見上げることができたり、また夜には「窓からお月様が見える!」といったロマンあるひと時を過ごすことも高窓ならではの楽しみです。

都田建設の「吹き抜け」施工実例はこちら

 

吹き抜けをつくるデメリットと解決方法

吹き抜けをつくる5つのメリットをお伝えしました。自由設計の住まいづくりは、平面的な動線だけでなく立体的な空間構成も家族のライフスタイルに合わせて設計できるため、ご入居後の充実感を高めることに直結します。ただ後々「こんなことなら作らなければよかった…」といった後悔にならぬようデメリットもしっかりと知り、その上で吹き抜けを採用することが大切です。

 

①冬の室内の温かい空気上昇

吹き抜けを作ると、暖かい空気が上昇し寒い冬に1階が冷えるのでは…と不安を持たれる方もいらっしゃいます。確かに暖かい空気は上昇します。家全体の空気の循環計画をしっかり作らないと冷気のみが1階に停滞するため、底冷えが絶えない住まいとなってしまいます。

しかし、吹き抜けを通じて上昇した暖かい空気をプロペラファンなどで2階全体へと拡散させながら緩やかに暖まった2階の空気全体が階段室を通じて1階に降りてくる、このような「吹き抜け+プロペラファン+階段室」の循環経路を設計に折り込むことでこの不安は解消されます。ご自身で検討されるだけでなく建築会社の設計者やデザイナーにご相談されることをお勧めします。

 

②家族間プライバシーの確保

前項では、音や匂いなどで家族のつながりを感じるシカケとなる吹き抜けのメリットをお伝えしましたが、逆に音が聞こえやすいことをデメリットと感じられる人もいらっしゃいます。

二世帯住宅のように1階と2階で別世帯が生活される場合、特に夜勤など生活リズムが異なるご家族様がいらっしゃるケースや、静かな環境が必要な趣味をお持ちの方などには、吹き抜けによってストレスを感じるかもしれません。また、吹き抜けを作りたい場所に開放感よりも「こもり感」「囲われ感」といった落ち着きを求める場合には、天井を高くする吹き抜けは逆効果となりかねませんので熟慮する必要があります。

 

③床面積の減少への配慮

家づくりには「建ぺい率」「容積率」という建物の規模に関する規制が関わってきます。なので敷地面積に対して床面積を目いっぱい確保したい場合には、部屋としての機能性を優先することになるかと思います。つまり吹き抜けではなく2階にもう1部屋作るという選択です。

そのような場合、たとえ吹き抜けは作れなくても、例えばリビングだけ他の空間より少し天井を高く設計すると、そのちょっとした高さの変化によって心の開放感を誘うシカケを作ることができます。

 

④「吹き抜け」でも建築工事費はかかります

吹き抜けは延べ床面積に算定されませんが、だからといって工事費がかからないわけではありません。もちろん床のある2階のひと部屋分の工事ほどの費用はかかりませんが、高所の壁・天井の下地・仕上げ工事などが発生しますし、その足場を設置する費用などが加算される場合もあります。メリット・デメリットを検討して投資する価値を熟考した上であなたらしい住まいを実現してください。

 

まとめ

まず空間ありきではなく、「暮らし方」から考える間取りとして「吹き抜け」を検討することをお勧めします。吹き抜けは家族にとって中心的な場所に設けることになります。だからこそ、新しい住まいで「ご家族がどんなひとときを大切にしたいか」「それぞれが個として大切にしたい時間はどんな場面か」といった事柄を棚卸しし、その上で「吹き抜け」空間のメリットとデメリットを検討することが大切です。

吹き抜けのあるリビングやダイニングが理想のイメージとお考えの方も多いかと思います。憧れのオシャレで快適な場所づくりにぜひこの記事をご参考にしていただけると嬉しく思います。

 

都田建設の「吹き抜け」施工実例はこちら

家づくりの叡智- 家のデザイン・間取り

Fine Pick Up