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映画「かもめ食堂」を観て思ったコト

WRITER

太田秀之 / Webデザイナー

映画「かもめ食堂」を観て思ったコト

プロローグ

映画のポスターやDVDのパッケージから何をイメージしますか?
俳優の姿に酔いしれたい気分のときは、俳優のアップの写真がポスター全体の8割以上占めているものを選ぶと高確率で魅惑な非日常が味わえるという傾向にある気がします。今回選んだ作品は個性の強い3人の女性がポスター全体の3割ちょっとを占めているものですが、「世界が一つに感じる瞬間」「美味しさはモノ?コト?」「再発見できる自分の国」一体この映画が何を伝えようとしているのか自分なりに思ったことを書いてみました。そして、なんとなく映画の魅力が伝わったらと思っています。

 

本編Ⅰ

ある日本人女性が移り住んだ先は、フィンランドの首都ヘルシンキ。
彼女は、以前までコーヒーショップだった店舗を活かし日本食の食堂を営んでいます。その名も“かもめ食堂”。まるまるしたカモメのアップで物語は始まります。
来る日も来る日もきれいなグラスを拭いているような毎日、突然!?謎の怪しい中年男性が入店してきます。その人物はおいしいコーヒーを淹れるためのおまじないを伝えるとその場を立ち去ります。そして去り際に一言「自分以外の誰かがあなたのために淹れてくれたコーヒーこそがおいしいコーヒーと」。

実はフィンランドは言わずと知れたコーヒーの大消費国、暇さえあればいつもコーヒーを飲んでいるとか?…映画の面白いところの一つは、物語を通して文化や習慣も学べるところです。

 

本編Ⅱ

食堂の店主は、お店に人を集めるための派手な宣伝などは一切せず、相変わらず来てくれるであろうお客様をお待ちしている、そんなある日、現地の青年が食堂に立ち寄ります。そこで以前教わったコーヒーのおいしくなる淹れ方を実践してみます。それからをきっかけに?徐々にお客さんが集まり始めます。いつの間にか、ある日本人旅行者も食堂店員として加わり物語は加速していきます。そして、さらにお客さんを呼び込もうと現地の食材で商品開発を試みますが、店主は何一つ満足がいかないようで…決まったメニューで日々淡々と食堂を営む毎日が続きます。
なぜこの主人公は、異国の地でお店を開き日本食の食堂をはじめたのか?観ている側も物語の中へ引きずりこまれていきます。最後まではっきりとした理由が語られることはありませんでしたが、一つだけ主人公が言ったことで印象的だったのは、「お店の一番のおすすめメニューは、梅・鮭・おかかの入ったそれぞれのおにぎり」でした。いまだにおにぎりを注文する人は誰もいません。

 

本編Ⅲ

常連のお客さんも定着し始めたころ事件は起こります。結果的には、問題の発端となる悩みを抱えたフィンランド婦人を手助けすることになるのですが、ここで第3の食堂店員となる日本人女性が登場してきます。フィンランド語も話せず、独特なたたずまいがこの婦人を癒し助けます。場面は一件落着になると思いきや、今度は、食堂を物色する泥棒と店員の3人が鉢合わせになってしまいます。犯人は、日本食食堂にする前のコーヒーショップの店主。以前においしくなるコーヒーの淹れ方を伝授してくれたあの中年男でした。合い鍵を持っていたようです。ヘルシンキともようやく信頼を築き始めた矢先だったのに…。犯人を捕まえたのですが、主人公の店主はその男を問いただすわけでもなく、突然立ち上がりキッチンに立ちおにぎりを作り始めます。そして店員2人も加わります。お皿いっぱいのおにぎりを泥棒とみんなで黙ってほおばります。おなかが満たされると空腹のときの怒り、悩み、不安がやわらいだようで、何か家族ではないのに家族団らんのような穏やかで不思議な空気が、この映画のクライマックスへといざないます。

 

番外編

この映画の中には、ヘルシンキの名所も映し出されています。オープニングに登場する港は、屋外マーケットが賑わうエテラ港だそうで、冒頭に登場した人懐っこいまるまるしたカモメたちには、餌付けは禁止のようです。劇中に日本人三人とフィンランド女性がリゾート気分でくつろぐシーンの場所は、オープンカフェ “カフェ・ウルスラ”は、地元の人にも人気の実在するカフェ・レストラン。買い物のシーンで使われたのは、地元の人が集まる温かい雰囲気のハカニエミ屋内マーケット。花を摘むシーンで使われた森はヌークシオ国立公園。キノコ狩りの季節にはだれでも自由に収穫ができるみたいです。パッケージの写真にも使われています。そして、水色と白のコンビネーションが特徴的なかもめ食堂も映画の前から実在しているようで、撮影のロケ地散策に訪れた監督が見つけとても気に入った為、ここに決定したとか!?実際の名前も“Ravintola Kamome”日本語で“かもめ食堂”だそうです。決して近くはありませんがロケ地巡りもおすすめです。

 

The End

みんなでおにぎりを囲んでほおばるシーン。主人公は「おにぎりだってやっぱり、握ってくれたおにぎりが一番美味しい」ということをふと悟ります。異国の地でお店を出して初めてフィンランドの土地と一体となったんだ!と想像できる瞬間でした。
日本人とフィンランド人は、国民性がよく似ているといわれます。人種や国が違ってもお互い理解しあい地元の友人のように接することがきっとしやすいかもしれません。
最後に、長年専業主婦をされていた方がよく言っていたことを思い出したので、ご披露させていただきます。「一番のご馳走は、据え膳(すぐ食べられるように、食膳を整えて人の前に据えること)だね!」映画「かもめ食堂」はゆっくりとフェードアウトしていくのでした。終わり。

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太田秀之 / Webデザイナー

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