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おうちに囲炉裏を!今こそ「囲炉裏のつくり方&楽しみ方」

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米倉秀人 / 建築デザイナー&一級空間意匠士

おうちに囲炉裏を!今こそ「囲炉裏のつくり方&楽しみ方」

はじめに

今では余り見ることも無くなった囲炉裏。それでも、ちょっと憧れる暮らし方。
ご家族やご友人と『炉』を『囲』み、食を楽しみながら、暖かな時間を過ごすことができます。近年では、高気密高断熱の住まいでの囲炉裏の設置は減ってきているのが現状です。その中でも、囲炉裏に対して、取り入れていきたいという話もあります。

今回は、そんな囲炉裏についての楽しみ方や、過ごし方、注意する点を紹介していきます。
ちなみに『囲炉裏』とは当て字なので元々は『いろり』です。

 

囲炉裏とは

囲炉裏とは、室内の床面を四角く切って設けられた炉のことをいいます。
正方形あるいは長方形に床面を掘り下げ、灰を入れた中で炭や薪を燃やし、暖炉や炊事として使用します。家族が暖を取ったり、食を囲んだり、家族のコミュニケーションの場所としても古くから使用されておりました。

 

囲炉裏の設置における注意点

現代の住宅において囲炉裏を設置しようとする場合、注意するべき点がたくさんあります。排煙・換気・防火になります。

当然家の中で火を使うわけですから、煙の対策は必然です。薪を使用すれば、すすも出ますので、室内環境の対策は必要です。
また、排煙・換気の為に窓を開けると、風の影響で灰が飛び散ったり、火も大きくなったり、あまり良い事ではありません。したがって、排煙・換気・防火の為の換気設備を計算して設置する必要があります。

昔の日本の建築物は悪く言えば隙間だらけなので換気の必要性はありませんでした。今の住宅は機密性の高い為、室内では一酸化炭素中毒の心配があります。したがって、今の住宅に囲炉裏を設置した場合は、窓を開けて換気する方法と、十分な換気設備設置した換気方法が必要になります。
むしろ、換気設備が整っていれば、囲炉裏は全く心配する必要がないのです。
また、気密の高い部屋での一酸化炭素も気になる所ですので、検知できる設備もあると安心できます。

換気設備

換気扇による強制換気が一般的ですが、囲炉裏を使う時期は寒い時期になりますので、給気設備からの冷たい空気を入れたくない場合は、熱交換型の換気設備があるといいです。

一酸化炭素の検知

一酸化炭素を検知できる警報器など、2000円程度で販売されているものを付けたり、またはダイソンの空気清浄機付きのファンも検知できるそうです。

火事

囲炉裏は火を扱う為、火事の心配は当然ついてきます。したがって、火の始末、炭火の処理がとても大事な仕事になります。
いろりで特徴的なのが中央吊るされている木の魚ですが、これにもちゃんと意味があり鍋や鉄瓶を支える棒の長さを調節する為にあります。また、この木を魚の形に作るのは、火の神様を喜ばすために魚をお供えするという話や、魚は水に通じるということで火事を避けるお守りであるという話があり、こんな所にも昔からの文化や風習を垣間見ることが出来ます。

囲炉裏のつくり方

現代の住まいに囲炉裏を作る前に、家の中で火を使用する為、法的な縛りがあることを知らないといけません。建築基準法では、薪ストーブ・暖炉・囲炉裏に関して、不燃材の内装仕上げについて「告示」を出しています。その為、新築の木造家屋の場合、木造2階建ての1階に囲炉裏を作ると、火気使用室となる為、台所同様の内装制限が適用されます。

内装制限

内装制限とは建物内部で火災が発生した場合、内装が激しく燃えることで、火災が広がったり有害なガスを発生したりして内部にいる人間の避難を妨げる状況がないよう、内装に関する規定を設けてそれを制限することをいいます。

告示内容

囲炉裏(長幅が90cm以下のものに限る。)を設けた室(いろりの端の各点を水平方向に95cm移動したときにできる軌跡上の各点を、垂直上方に130cm移動したときにできる軌跡の範囲内の部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を含む場合にあっては、当該部分の仕上げを特定不燃材料でしたものに限る。以下この号において「いろり可燃物燃焼部分」という。)に壁又は天井が含まれる場合にあっては、当該壁又は天井の間柱及び下地を特定不燃材料としたものに限る。)
囲炉裏の可燃物燃焼部分の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを特定不燃材料ですること。
いろり可燃物燃焼部分以外の部分(いろりの端の各点を水平方向に150cm移動したときにできる軌跡上の各点を、垂直上方に420cm移動したときにできる軌跡の範囲内の部分に限る。)の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを難燃材料等ですること。

オレンジ部分は特定不燃物の範囲を示します
黄色部分は難燃材料等の範囲を示します
それより外は内装の規定はありません

したがって、囲炉裏を計画する場合は、いろりの端から95cmまでに壁などがある場合は、下地仕上げ共不燃材にしなければなりません。また150cmまでに壁があれば準不燃材で仕上げれば良く、それ以上の離隔であれば仕上げの規制はありません。天井については、420cm以上なら難燃にする必要がありません。吹抜けであれば問題はないのですが、1階に囲炉裏を設置し天井がある場合は、下地仕上げ共準不燃材にしなければなりません。見た目の雰囲気として石膏ボードを張って認定品のビニールクロスを貼るわけにもいかない為、木造2階建ての住宅で、囲炉裏を設置する場合は、工夫が必要になります。

置き囲炉裏

置き囲炉裏や囲炉裏テーブル(移動できる箱型の囲炉裏)は、火鉢やカセットコンロと同じで、内装制限の対象外と考えられます。内装制限の対象外だからと言って、甘く見てはいけません。新築後に囲炉裏テーブルを置く方もいらっしゃいますが、家の中で火を使用することは一緒ですので、十分に注意しなければいけません。もし新築の計画の中で、置き囲炉裏や囲炉裏テーブルを置く計画があるのであれば、内装制限をしっかりと厳守し、換気設備を整えることをお勧めします。

囲炉裏の楽しみ方

暖を取る

囲炉裏のメイン機能として、部屋全体を暖める効果があります。但し、現代の高気密高断熱の住まいでは、火を扱ってのデメリットが多く、部屋全体を暖めるとなると、換気や防火対策が必要になります。その為、現代の囲炉裏の楽しみ方としては、皆で囲んで食事をすることがメインとなっています。但し、やはり火を眺めて暖を取るという憧れは、捨てきれないところではあります。特にアウトドアでキャンプを楽しまれている方は、囲炉裏の火を眺めている時間がかけがえのない時間になると思います。

料理

囲炉裏と言えば、料理を思いつく方も多いと思います。薪で鍋を煮たり、炭火で色々な食材を焼いたり、囲炉裏には幅の広い料理をすることができます。また最近では、バーベキューの道具も進化していますので、ホーロー鍋やストウブ鍋でチーズフォンデュをしたり、囲炉裏料理も進化をしています。また特に気を付けないといけない事が、焼く物によりますが炭火に脂がかかると煙と炎が出てしまいます。炭火から距離を置いたところで串焼き料理にするなど、炭に脂がかからないように工夫することが大切です。

囲炉裏の燃料

囲炉裏に使用する燃料には、薪と木炭が必要になります。それぞれの燃料には特徴がありますので、メリットとデメリットを検討した中で、どちらの燃料にするのかを決める必要があります。

薪を燃料にした場合のメリットして、火の揺らぎを楽しめる事ができます。また、火力がありますので、お鍋料理にも最適です。

またデメリットとして、炎も大きく、煙も出て、すすも出ますので、防火対策、排煙と換気対策が必要になります。
したがって、古民家のような広い空間で、すすが付いても大丈夫な内装であれば問題ないのですが、現代の高気密高断熱の住まいには不向きの燃料となります。

木炭

木炭を燃料にした場合のメリットとして、煙も臭いもあまり出ないのが特徴です。薪よりも燃焼時間は長く、少量でもある程度の火力を保つ事ができます。

またデメリットとしては、薪のような高火力は期待ができない為、お鍋などは時間が掛かったりします。薪よりも高価な為、燃料費は薪よりも掛かります。現在は薪よりも木炭のほうが主流になっていて、高気密高断熱の住まいでも、換気設備さえ整っていれば、簡単に囲炉裏を設置することができます。

最近では、木炭よりも火持ちが良く、煙も臭いもほとんど出ない備長炭を使用する方もいらっしゃいます。もちろん、木炭よりも高価になりますが、美味しい料理が楽しめそうです。

 

まとめ

近年では、囲炉裏を設置する方はほとんどいない中、それでも囲炉裏に憧れ、その風情に惹かれ、住宅や店舗に取り入れたいという方も増えています。
遠赤外線効果で食材が美味しくなったり、寒い冬はみんなで火を囲んでの団らん。電気を使わない自然な暖かさを求めるスローライフ志向の方には、囲炉裏は特別な存在となっています。

今後、コロナ禍によるステイホームでの暮らしから、スローで丁寧な暮らしを望む方も増え、薪ストーブや囲炉裏を取り入れてみたい方も多くなるのではないかと思います。ただし、電気やガスとは違い、火を扱う事に対しては十分な知識と管理があって、火を楽しむ暮らしが実現できますので、設置する際は専門的な知識を持ったプロにお任せすることをお勧めします。

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米倉秀人 / 建築デザイナー&一級空間意匠士

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