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ポートランドのコミュニティーから学ぶ、豊かに暮らす生き方のヒント

WRITER

小林紗代里 / インテリア・アドバイザー

ポートランドのコミュニティーから学ぶ、豊かに暮らす生き方のヒント

ポートランドという街

まず、ポートランドと聞いて疑問符が浮かぶ方も多いと思います。
ポートランドはアメリカ合衆国西海岸にあるオレゴン州にある都市で、
日本でいうと博多や札幌くらいの規模の街です。
実は全米住みたい街1位にも選ばれたことがあります。

 

ポートランドは魅力がいっぱいで、
コーヒー、地産地消、アート、豊かな自然、クラフトビール、DIYカルチャーなど上げるとキリがありません。
そして、2016年の秋から約1年間、この街で実際に暮らす中で、ポートランドに住む人々の飾らないけれども豊かな生き方に気づかされる機会が数多くありました。

「安い、便利、気軽」そんな言葉に溢れた今の世界にキラッと光る未来を見せてくれるポートランド。
そんな都市での暮らしを通して私が感じた「ポートランドから学ぶ豊かに暮らす生き方のヒント」をお伝えします。

 

食と地産地消を楽しむ街

ポートランドの食事情

ポートランドは人口あたりのレストラン・バー数が全米トップクラスといわれており、食材にこだわった様々な文化のレストランが軒を連ねています。
街を歩くだけで食事を楽しみながら談笑している人々の姿がすぐに目に入り、今日は何を食べようかと胸が躍ります。

 

また、水がきれいなことからビールやワインのブリュワリーも市内に50軒以上存在しており、街の中心地でビールを生産、提供しているお店もあります。
ずらりと並ぶ巨大な醸造用の銀のタンクの横で、冷えたビールを楽しむ。
そんな光景を街のあちらこちらで見かけることができます。

 

地産地消を楽しむ

そして何よりも素敵なのが、ポートランドのシェフ達が地元の食材を使用することを大切にしていることです。

「地元食材は何よりフレッシュで美味しいから」
「地域の農家さんを応援できるから」と肩肘張らずにシェフ達は地産地消を実践しています。

実際に私が体験したエピソードでは、シェフがイベント中に調理をしながら食材1つ1つの生産者を紹介しつつ、「ポートランドは生産者とシェフの距離が近い街だから、お互い刺激しあってどんどん新しいものが生まれているんだ。そこがこの街の良いところだよね」と楽しげに話すのを聞きました。

 

地産地消はもちろん各家庭にも根付いており、市内の各所でファーマーズマーケットが行われています。
特に全米最大規模のマーケットがポートランド州立大学の構内で開催されており、毎週お祭りのような数の人々が地元食材を求めて集まります。

また、マーケット内ではお客さんと生産者さんとの会話があちらこちらで生まれ、スーパーで野菜を買うだけでは得られない日常がそこにはありました。

 

日本では生産者と調理人、食べる人との間にコミュニケーションをなかなか持てないのが現状です。
一方、「美味しかったです!」という嬉しい感想や一緒に良いものを作りたいという想いがダイレクトな会話を通して行き交うポートランドの食文化からは美味しいだけではない一味違う豊かさを感じました。

 

ローカルを愛する空気感

地元のお店をサポートする

地産地消が代表するように、ポートランドに住む人々は「ローカルファースト」と言われる地元の生産者やブランドなど大切にする意識が高く全国でチェーン展開しているお店よりも個人で経営しているお店が圧倒的に目に入ります。

街のランドマークになっている「パウエルズ・シティ・オブ・ブックス」という本屋さんは
世界最大規模の独立系書店ですし、コーヒー屋さんはポートランド発で有名なお店が街に何軒もあります。それに加えて自分の家から徒歩圏内でお気に入りのカフェがある人も多くいます。

地元のお店をサポートする意識が強いことに加え、カフェやバーを単なる飲食店としではなく、人と人との交流を生み出すコミュニティーの財産と捉えるポートランドでは、不況の時もローカルなカフェが潰れずに乗り越えてきたというエピソードを聞いたこともありました。

 

 

私が滞在中に胸が温かくなったエピソードがあったのでここで1つシェアしておきます。
冬のある日、過去例を見ないほどの大雪がポートランドを襲い、街の機能はすべてストップしてしまいました。ようやく天候の回復が見られた時、1つのインスタグラムの記事がアップされました。

「来月は地元のお店のサポートも忘れずに!あなたのお気に入りのお店で、コーヒーを買い、ビールを飲み、食事を楽しみましょう!」。
自身が大変な中でも、地域の人々をサポートしようという姿勢にこれからのコミュニティーの在り方をみたエピソードでした。

 

才能も地産地消で

また、街のもう1つのランドマーク「エースホテル」では地元のアーティスが描いたアートを客室1つ1つにしつらえています。
「食材はもちろん才能も地元のものを」そんなポートランドらしい精神を大切にしているからこそ、エースホテルは街の中心になりえたのかもしれません。

 

地元の食材や地元のお店を選ぶことにより、地域の中でお金が周り、さらにその地域が魅力的になり、住民同士の交流が豊かになっていく好循環が広がるポートランド。
私たちも何かを選ぶ時には、「ローカルファースト」という基準を取り入れてみるのもいいかもしれませんね。

 

アートや自然を取り入れた暮らし

ポートランドはクリエイティブな街と言われることもありますが、その源は刺激の多さにあるのかもしれません。

街を歩けば芸術的な壁画やオブジェが目に飛び込んできます。
ファーマーズマーケットに足を伸ばせば、どこからか楽器の音が聞こえてきます。
15~20分ほど車で走れば雄大な自然を堪能できます。

 

そして、ポートランドに住む人々は積極的に日常の余暇としてそういった刺激を取り入れています。
そんな恵まれた環境の中でも受け身にならず、能動的に新しい刺激を楽しむ人々が住む街だからこそ、ポートランドはクリエイティブな街と言われるのかもしれません。

 

とりあえずやってみようというチャレンジ精神

そして何より、ポートランドの魅力を支えるのが「とりあえずやってみよう」というチャレンジ精神と新しい挑戦を受け入れ応援する空気感です。
もともと開発前は倉庫基地であったポートランドは住民と行政の連携によって「住みたい都市」と呼ばれるようまでに生まれ変わりました。
だからなのか、人々の間にDIY精神を持ってチャレンジする姿勢が自然と根付いています。

「今やポートランドといえば」と言われるほどお店の数々も、最初は「こういうのがあったらいいな」というニッチな一人の思いや趣味を仕事にしようと挑戦し、徐々に街中から愛されるようになったという話をよく聞きます。

また私が授業の一環でコミュニティーの活性化に参加した時、そのエリアの代表の方が「やってみなければわからないからね。うまくいかなければ、また改善すればいいから」と気負わずにおっしゃっていたのがとても印象に残っています。

 

「失敗を恐れずに挑戦する」という言葉はよく聞きますが、それを責任がある立場でも自然に実践することができる姿勢と、そんな挑戦を応援できるコミュニティーが街の至るところにあるからこそ、街としての魅力が日々アップデートされ続けているのだなと感じました。

 

 

ポートランド が人を惹きつける訳

まだまだ語り尽くせない魅力のあるポートランドですが、
もちろん解決しなければならない課題も数多く目にしました。
そして1年住んだだけでは理解しきれないものがまだまだあることも痛感しました。
それでもポートランドに住む人々が日々 Do it ourserlves (自分たちでやってみよう!)の精神で取り組むコミュニティを豊かにする街づくりには学ぶことばかりでしたし、私も本当に心豊かな1年を過ごさせてもらいました。

 

「楽しい未来がやってくるから」と自分の愉しみと絡めつつ
周りの人のため、街のため、地球のために挑戦し、協力し、応援するコミュニティー。
そんなところがポートランドが人を惹きつける1つの理由でもあり、
私たち一人一人がこれからを豊かに暮らす生き方のヒントなのかもしれません。

 

 

 

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小林紗代里 / インテリア・アドバイザー

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